2012年2月18日土曜日

【ゲーム開発】ゲームとお金の話 「ソーシャルゲームの未来」

ヨコオタロウの日記-4062747596.09.jpg


失敗に対する理由は400万もあるが、
詫びの言葉は一つたりともない。

/ ラドヤード・キプリング



これまでの話。

【ゲーム開発】ゲームとお金の話 その1 「それはゲームか?」
http://ameblo.jp/yokota6/entry-11129148458.html

【ゲーム開発】ゲームとお金の話 その2 「お金と時間」
http://ameblo.jp/yokota6/entry-11135250229.html

【ゲーム開発】ゲームとお金の話 その3 「ソーシャルゲームが嫌われる理由」
http://ameblo.jp/yokota6/entry-11140630099.html

【ゲーム開発】ゲームとお金の話 その4 「正しいお金儲けとは?」
http://ameblo.jp/yokota6/entry-11154738965.html

今日は長文になりました。
短い方が読みやすく読者にも自分にも優しいと思いますが、いい加減決着をつけたいので一気に終わらせます。



前回の話→「ソーシャルゲームは法的には賭博じゃない……今のところは」。

まあ違法では無いのですぐに司法組織がアクション起こしたりする事は無い、という事で。しかし、ある特定の問題が社会問題化すると普通はそれに対する自主規制が行われたり是正勧告が行われたりします。たとえば


ビックリマンチョコと社会問題(是正勧告)
Wikipedia http://bit.ly/yts1LE

ペプシコーラのおまけ(是正勧告)
http://bit.ly/xBfZ4l


とか。ビックリマンやペプシなんかは「お金で買えるモノが不透明で格差がある状態」という点が問題だったのですが、別に他の商品にもそういうタイプのものは沢山ありますよね。トレーディングカードとか。でもビックリマンやペプシだけが問題になった。

この場合、問題になるのは「売れた量」でした。正しさの加減ではなく、影響の量。
携帯ソーシャルゲームについても、既に消費者庁が「完全無料表示やめれ」みたいな表示を出すようになって、各社それなりに気を遣っているみたいですが。



では何故、社会問題化するか?
あんまり表に出てこないんですが、ソーシャルゲーム系の売り上げ比率を大雑把に言うと

 ・全体の10~30%が課金ユーザー
 ・課金ユーザーの10%が超課金ユーザー

こんな感じだそうです(※あくまで知ってる範囲の話なので全部が全部そういう構成かどうかは知りませんが)。「超課金ユーザー」ってのは一日で何万も使っちゃったりするような人達です(※今勝手に名付けました)。つまり全体の1~3%がもの凄い金額を投下してるんですね。

この「超課金ユーザー」が運営としてはもっとも大切にすべき相手です。残り99%なんて売り上げ的には大して大事じゃない方針(って作ってる人が言ってたのでそのまま記載)。事実かどうかは知りませんが。まあ、データとしては

2012年のソーシャルゲーム市場の展望
http://gamebiz.jp/?p=47627

とかを読んでいただくとして。←先に出せ。



ともかく、比率的に課金ユーザー・超課金ユーザーは少ないですから、なるべく全体のパイを大きくしないといけない。結果的にCMをバンバン打って課金ユーザーを増やす必要がある訳です。

「99%のユーザーは大事じゃない」という事は「大事なユーザー一定量を確保する為にはその100倍の参加が必要で」という事になります。参加でこれだけ必要なんですから、周知するのはさらに10~100倍の人数になります。

だから、CMを大量に打つ。そうすると一般に周知されますし、超課金ユーザーも非常識な高額を投じる人が出てくる。

「何万人も声かけて少人数が当たればいいや」という売り方は、オレオレ詐欺やフィッシングサイトと同じ流れです。しかしこのやり方は派手なので目立つんですね。目立ては叩かれる、簡単な理屈です。

大ヒットしたソーシャルゲームが社会問題化するのはその販売方法の構造に原因があるんです。



社会問題化した場合、どういう流れがありえるのか?

まずは業界団体による自主規制。

消費者庁や公正取引委員会から「オイオイどうしたんだよオマエらなんとかしろよ」って言われる前に「いやいやウチはちゃんとやってますから」って言う組織。コンシューマーで言うところのCECAとかです。

ちょっと話がそれますが、ビデオゲーム業界ってのは元々はゲーセンから始まったんですね。黎明期はテキ屋とか裏社会とかと繋がっているような世界だったんです。老舗のゲームメーカーにはヤクザに対応する専用の部隊が居たくらいで(今はどうか知りませんが)。

それが産業として大きくなって、一般化するときにダーティなイメージがあると問題になる訳です。PTAや警察からの攻撃されちゃう。だから、AOUとかCESAとかの団体を作って(※)そこがなるべくクリーンなイメージになるような自主規制・施策を打つ訳です。
※自主規制の為だけでは無いですが。

なんで自主規制するか、と言うと公的権力の介入があると意味のわからない規制が行われたりするわけですよ。↓みたいな狂人が出てくるわけです。

都知事選出馬表明の松沢氏「首都圏で"暴力ゲーム"規制する共通ルールを」
http://news.nicovideo.jp/watch/nw39910

公的規制はユーザーの事も業界の利益も考えませんから、たまったもんじゃありません。だから事前に「ちゃんとやっていますよ」というアピールをする必要がある。それがCEROだったり映倫だったりするわけです。

パチンコなんて常に目を付けられていますから、ものすごい自主規制でガチガチの世界です。他業種なんであまり詳しくないんですが、流血表現やお色気描写なんかもゲーム以上に厳しい世界だそうで。

本命がある中・・・【表現規制】!?
http://bit.ly/wRuqLO



で、ソーシャルゲーム。

CEROなんかの団体は反社会的な存在になるのを極度に恐れますから、ソーシャルゲームに於いて自主規制ルールを作る可能性はあり得ます。

ただ、CEROはコンシューマーゲームを基本とした団体なので、そんなところに利権を握られるよりはグリーとかが別の団体(たとえば携帯電話ゲームの業界団体)なんかが発足するのかもなーと思ったり、しました……が、二大巨頭のモバゲーとグリーが仲悪すぎるのでちょっと無理っぽい予感もします。


DeNAがグリーを逆提訴、損害賠償と謝罪文を要請
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120131_508809.html


そもそも携帯ゲーの会社さんはゲーム業界の古いしきたりには囚われずにアグレッシブな攻めを見せたりするので自主規制なんてしないかもしれませんし。


グリーのゲームの元ネタ画像一覧
http://matome.naver.jp/odai/2131661871024177801



ソーシャルゲーム業界ってのはいわゆるIT業界から流れてきたスーツ族の人が経営陣に多いらしく「ソーシャルゲームはビジネスの一つに過ぎないので滅びたらまた別のITで儲ける」と考えている人が結構居るそうで。(※なんか人から聞いた話が多いので、本当に話半分にしといてください)

だから業界にアイデンティティをヒモ付けるような行為、たとえばクリエイターが名前を出して表に出てきたり、開発会社の名前を押し出すような事があんまり無いとか。

ITの人達は自主規制なんかせずにパーッと儲けて禁止にされたら別の畑を見つけるのかもしれません。



他に公的規制を回避する手段を考えてみます。

社会問題化するには母数が多くないとダメです。母数を増やすにはプラットフォームが大きくないとダメ。だから携帯電話のプラットフォームが一番社会問題化しやすい。

携帯電話というシバリでいえばゲームプラットフォームの「モバゲー」「グリー」が二大巨頭で、あとは携帯キャリア(ドコモ/ au / Softbank)です。

規制をかける対象になる相手の会社は意外と少ないんですね。
ダイヤルQ2の時もアダルト系課金で問題になりましたが、NTT一社だったので社内規制だけで全て丸く収まりました。


ダイヤルQ2はそれからどうなったのか
http://www.timesteps.net/archives/1696132.html


昨今の携帯ソーシャルゲーの隆盛は携帯課金にヒモ付いたマイクロペイメント(少額決済)が大きな理由ですから、そのあたりを締めればそれなりの効果はあると思います。ちなみに今はやっている場所や、やっていない場所があるようです。


Q.モバコインを購入できる上限額はありますか?
http://yahoo-mbga.jp/help/content?no=65&id=87&pid=1267

Q. ユーザ一回当たりの決済限度額や、特定期間の一人当たりの利用上限金額は設定されていますか。
http://developer.dena.jp/mbga/contact/faq1.html#4_5



決済や金額規制以外に、何を規制するか?という部分はかなり難しい話で。

前回書いたパチンコ業界の倍率規制は「金で金を狙う」というわかりやすい構図だったので規制しやすかったんですが、ソーシャルゲームは「金で情報を狙う」というタイプなのでいろんな抜け道があります。今流行のコンプガチャや多連ガチャなんかがありますが、


モバイルSNSゲームが儲かる本当の理由。かーずSPはなぜ15万もつぎ込んだのか?
http://togetter.com/li/255073

【マジキチ】 ドリランドに一瞬で18万使った課金厨登場!コンプリートおめでとう(´;ω;`)
http://jin115.com/archives/51845401.html

ガチャシミュレーター
http://49.212.5.128/compsim/


これらを規制しても他の手段はいくらでもありますから。
パチンコと違って台があるわけでもないので、裏で操作もし放題です。

ペニーオークション - Wikipedia http://bit.ly/ohWRSl

みたいなテクニックとかありますし、本当に何でも出来ます。
なので、個人的にはシステム的な規制は難しいんじゃないかなーという印象です。



社会問題化するのを回避する他の方法としては、ターゲットを狭く深くする、という手があります。これは本来のソーシャルゲームの構造からすると逆行しているんですが、濃いオタク(信者)であれば金払いもイイのでビジネスとして成立します。


モバゲじゃなくてアイマスが凄い
http://d.hatena.ne.jp/nakarx/20120210/1328865886

「モゲマス」にニートショック到来! 「双葉杏」を求めて大金をぶっ込むプロデューサーが続出
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1202/02/news013.html

【アイマス シンデレラガールズ】課金につかれたモゲマスPに捧ぐ名言集 ほぁ
http://blog.esuteru.com/archives/5851757.html


なんという嬉しそうな悲鳴。完全にお布施です。
ちなみにモバゲーアイマスでバレンタインのイベントカードかなんかが貰えるらしいんですが、20万人(※推定)くらい居るユーザーのうち上位500名がもらえるらしいです。その倍率
0.0025。死ねます。



大量の広告を打つ戦略だと、どうしても焦土戦になりがちです。ケータイソーシャルゲームもその兆しがあります。一方で「狭く深い」ビジネスは不特定多数をターゲットにしないので社会問題化しませんし、広告宣伝費も安く済みます。

コンシューマーゲームでもそうでしたが、不特定多数へのビジネスから特定の狭く深いユーザーへのシフトは必然な気もします。



で、モバゲーアイマスの未来をちょっと想像してみますが、

 ・モバマスのキャラから総選挙してコンシューマー版に抜擢。
 ・コンシューマーパッケージにモバマスのカードをプレゼント。

みたいな連動施策がいくらでも思いつきます。
実際に画面を作った有志の人も居るらしいですが。


『アイドルマスター シンデレラガールズ』のキャラを使ってコンシューマ版アイマス風画面にした有志の力作が凄すぎる!
http://blog.esuteru.com/archives/5867272.html


これは架空の作品ですが、こうしたソーシャルゲーム以外の製品との連動が開始され、複雑な収益構造になると。



ということでソーシャルゲームの未来の予想をしてみると、

 ・このまま増大すれば社会問題化する。
 ・しかし規制は抜け道が多く実効性が乏しいので行われない。
 ・だから「怪盗ロワイヤル」のような全方位的製品は減る。
 ・そして狭いターゲットにシフト。
 ・他製品との連動・融合の開始。

こんな感じでしょうか。
ゲームでも何でも、何事も飽きというのはやって来ます。対戦ゲームのブームがスト2~バーチャ2を頂点としてゆるやかに下っていったように、ソーシャルゲームもやがて縮小する(かその姿を変える)でしょう。

今ある問題よりも、そちらの未来の姿を考える方が個人的にはワクワクします。



~反省会~

長々とお付き合いありがとうございました。

ということで、長々と続いた考察も終了。
今回はアレですね。ダメでした。コンシューマーに比べるとソーシャルゲーム業界との接点が少なく、日記に深みが出せませんでしたね。一応ここまで引っ張ったスジとして、過去と現状の分析から未来を考えてみましたが、イマイチだった感をぬぐえません。本当は「ゲームとお金」という話についてもっと深めたかったんですが。

専門分野外の事は観客としてワーワー言うか、専門分野の話題に引き込んで新しい視点を提供する方が日記としては面白くなるなあ、と思いました。

これに懲りず今後も本日記をご愛顧いただけますよう、心よりお願い申し上げる次第であります。


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