2014年2月13日木曜日

【日記】考えさせられる「感動系CM」前編


なぜいつも遠くへばかりいこうとするのか?
見よ、よきものは身近にあるのを。
ただ幸福のつかみかたを学べばよいのだ。
幸福はいつも目の前にあるのだ。

/ ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ



最近話題になったダヴのCM。

ダヴ リアルビューティー スケッチ
https://www.youtube.com/watch?v=E8-XKIY5gRo

今日はこのCMの感想とか。
※ネタバレが多分に含まれるので、イヤな方は先に各動画を見ることをオススメします。



このタイプの映像を僕は勝手に「感動系CM」と名づけています。
「短い時間で如何に人の心を掴むか」という部分で、ゲームシナリオなんかにもとても参考になります。時間も短くて素晴らしい。物語を作る系のお仕事をされている方にはオススメ。

で、そんな感動系CMを見ていると、いくつかのパターンがある事に気付かされます。「情熱系」「喪失系」みたいな感じで。
人の感情の複雑さと単純さを感じずにはいられません。

ダヴのCMは「静か系」とでも言うのでしょうか。
静かに人間の美しさを語る、的な。



このメーカーは「美しさとは何か?」というヒューマン的なテーマを企業理念にしているらしく、サイトにもそうした説明が書いてあります。

美しさは、その人の内側から
http://www.mydove.jp/jp/Our-Mission/Our-Vision/Beauty-Inside-Person.aspx

それは、たとえばこんなCMに現れています。

dove evolution
https://www.youtube.com/watch?v=iYhCn0jf46U

石鹸会社ならではの実直なメッセージ。
というか、化粧品会社には真似の出来ないアグレッシブな方法でもありますが。



今回の「ダヴ リアルビューティー スケッチ」CMでは。

A 自己認識イラスト
B 他者認識イラスト

を比較し、「自分が思っているよりも貴方は美しい」という事を語っており、女性のみならず自己認識に関わる全ての人、つまり全ての人に対するメッセージになっています。

しかしこのCM。よくよく考えてみるとちょっと「?」な部分が多い。

たとえば、画家。
彼が事前にCMのコンセプトを知っていたとしたら、AよりもBを美しく描く事は容易です。悪く言えば「ヤラセ」とか「仕込み」のような事が出来ます。



さらに情報の認識と、その表現について。

人の多くは自分をよく見られたいと思っている動物です。
なので、何かの説明を求められた時には

 「謙遜して、自分を悪く言う」

という言う事がよくあります。
逆に、他者を説明する場合には

 「良い部分を探して褒める」

という傾向になります。
このCMであられているのは、そうしたコミュニケーションの表現部分でのギャップであり、実態としての「美しさ」の情報は自己と他者の内部で変わっている訳では無い、とも考えられます。



また一、相手の容姿を卑下しないのはそれが他人事だからです。
自分の顔だったら細かいところが気になりますが、他人であれば、まあそれでいいんじゃない?的な感じになるのは当然です。これは

 「他人はそれほど貴方の容姿を気にしていない」

という事を示しているに他なりません。
それは残酷で孤独な話です。

今回のダヴのCMから、僕がまず感じたのは「欺瞞」でした。
映像演出のテクニック的に良く出来ているので、感動してしまいますが、構造を探れば探るほど「本当にそうか?」という点がポロポロ出てくる。



でもそのプロセスの中で、自己認識とは何か、他者の認識とは何か、という点をじっくり考えてみると様々な疑問に突き当たります。

 自分で美しいと思う事は何か?
 他人に褒められれば良いのか?
 そもそも「美しさ」とは何か?

最初に感じた「欺瞞」が、喉にひっかかった骨のように気になり、そこから広がる思考。それらの問いかけを前にすると、CM映像は答えを出しているような出していないような不思議な感じ思えてきます。

 「他人は容姿なんて気にしないさ。ベイベー」
 「美しさっていうのは一定ではないんだよ。ベイベー」
 「自分で自分を褒めてやれよ。もっと気軽にな。ベイベー」
 「嘘とか本当とか無いんだよ。ベイベーが決めるんだ」
 「答えばベイベー自身が作るんだ。ベイベー」

本当に多種多様な答えが出せる。こうした回答の前にすると、自分が感じた欺瞞は小さなモノのような気がしてきます。ちなみにベイベーって言ったのは、画家がじょっとジョージ・クルーニーっぽかったからです。ジョージなら言いそうじゃないですか?ベイベーって。



まあ、そんな感じで感動系CMは楽しめるなーと。

制作側の意図かどうかは知りませんが、パッと最初に感じる強い印象と、そこから広がる思索の楽しさがあり、今回のダヴのCMは自分の中でも気に入ったCMの一つとなりました。

実はもう少し他のCMも紹介しようと思ったんですが、長くなったので今日はここまで。


それでは、また。


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