2012年6月23日土曜日

【シナリオ】ゲームシナリオ四方山話 その3

ヨコオタロウの日記-51jwrkFnLPL.jpg


どんな芸術家でも最初は素人だった。

/ ラルフ・ワルド・エマーソン



という事で、ゲームシナリオのヨタ話です。

これまでのログ
その0 http://ameblo.jp/yokota6/entry-11243939844.html
その1 http://ameblo.jp/yokota6/entry-11248574537.html
その2 http://ameblo.jp/yokota6/entry-11273038241.html

前回のお話

ゲームに於けるシナリオの重要度は全体の要素のバランスによって決定される。そして自分はシナリオを重要視していない。

という話の続き。
今日はちょっと基本的な話なので、業界の人はつまらない予感。



謙遜でも何でもなく、自分は文章が上手いとは思っていません。やはりモチはモチ屋で、プロフェッショナルの文章屋さんにはかなわない訳です。

それでもなお、ライターさんに任せずに自分で書く場合があります。文章のクオリティよりも優先度が高い事項が存在する為です。



小説などの文章だけで簡潔するメディアと違い、ゲームは映像や音楽などを交えた複合的なメディアです。

それぞれが相互に干渉し合うので、台詞のクオリティが高くてもそれだけでは成立しません。

 ・文章だけで表示される台詞。
 ・イラストが表示されるノベルゲーの台詞。
 ・ファミコンみたいな2Dキャラが話す台詞。
 ・美麗な3Dイベントで語られる台詞。
 ・ドラマCDの台詞。

これらは全部必用とされる文法が違います。



たとえば、ABCのキャラが3人居る状況があります。

 A「殺すっ!」

で、という台詞が表示されている状況を考えてみましょう。
小説などで前提状況が示されていたり、3Dイベントで映像を見る事が出来るのであればこの台詞は成立します。が、ファミコンのような2Dキャラでは誰が誰に話しかけているのかのディティールが存在しません。なので、

 A「お前達を……殺すっ!」

というようにしてやる必用があります。こうすれば「Aを除く複数の人間(つまりBとC)を殺す意図がある」と判るのです。



同様にドラマCDなどでは絵がありませんから、頻繁に「どのキャラが誰に話しかけているのか」を明示する必要があります。

 A「おはよう」

ではなく

 A「おはよう、Bさん」

みたいな感じですかね。
ライターさんの脳内には誰が誰に話しかけているのか画があるので問題ありませんが、聞いている人は全く判りませんから、割と丁寧に状況描写をやってやる必用があるわけです。



ゲームを初めとしてエンターテインメント製品の開発で最も重要な事は「完成させる事」です。
文章のクオリティ以前に、完成品としての要件を満たす必用があり、それを満たすには文章が上手なだけでは成立しないのです。

なので、ゲームの現場では自分で文章を書く人が多い……のですが、それはそれでまた別の問題を引き起こします。


という事で次回は「プロが書かない文章が引き起こす問題」について。
またしばらく先になると思いますが、のんびりとお待ちください。


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