結合した五つの語が示すのは
社会学に関する革命的洞察の要約。
理解 / テッド・チャン
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むかーし読んだ小説のメモが出てきました。
あなたの人生の物語 / テッド・チャン
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150114587/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&tag=bukkoro-22
SF短編集なんですが、その中に収録されている「理解」という短編が好きです。これ、前にも書いた気がしますが……まあいいや。
で、色んな人にオススメしてみたんですが、どうも評判が悪い。
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短編なのであまり書くとネタバレになりますが、簡単な要素を箇条書きにします。
・主人公が事故で脳に損傷をする。
・治療の為の薬で偶然に超知性を手に入れてしまう。
・そこから起こるドタバタ劇。
こんな感じです。ドタバタってのはまあ、サスペンスと言い換えていただいても。
「アルジャーノンに花束を」を想像した方も多いかと思いますが、アレとは全く異なります。あんなヒューマンなドラマじゃなく、もっとドライな感じですね(わかりづらい)。
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この物語では圧縮言語が出てきます。主人公の知性が進むがあまり、自分の思考プロセスの為に新しい言語を生み出したのです。
これについて「短くなった言葉は人間にとっての進化を意味しない」と、そのアイデアが批判されているレビューを見ました。
このレビューは二つの点で間違っています。
まず、現代の言葉のデータ(構造や表現のゆらぎや余白)を完全に残したまま言語を短縮する事は可能です。普通の言葉の上にもう一層エンコードとデコードのレイヤーを持たせればいいだけですから(処理の時間は超知性がゼロにすると仮定)。その上で必要に応じた新仕様が乗るだけでも、言葉は劇的に進化するでしょう。
次に、この短編小説はそうした発想やガジェットが新しいのではなく超知性・高速思考を手に入れた主人公が終盤に見る新たなビジョン(とそこに到達するプロセス)が魅力なのです。途中の要素に瑕疵があったとしても、この魅力を損なうものではないと思います。
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主人公はその知性のあまり武術の達人だけが到達するような境地に到達してしまいます。その説明描写が変わっています。何せ超知性ですから、僕らには見えてないモノが沢山見える。よく「映像化は不可能」と言われますが、これこそ不可能だと思いました。
そして、その戦いの以外な決着。
読んで思ったのですが、主人公の思考速度のせいで展開が異常に早く、短編になってしまった気がします。そこを含めて僕は傑作だと思っているのですが。
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ま、小説の好みなんて人それぞれですからね。僕もこの本の他の短編は別に好きでも何でも無いですし(言わなくていい)。
それでは、また。
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2012年1月4日水曜日
【日記】小説短編「理解」
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