2013年1月7日月曜日

【日記】仮想現実旅行

ヨコオタロウの日記-HNI_0016.JPG

人が旅をするのは到着するためではなく、旅行をするためである。
/ ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ



ドブ森を継続プレイ中。
内容は前作同様で、ネットワーク経由でプレイ出来るのは多少違うけど、体験としては同じ……だと思っていたら、村から行けるリゾート「南の島」がとても良かった、のでその感想です。



「南の島」はシステム的にはこんな感じ。

 ・ランダム生成の地形でミニゲーム数種。
 ・小さな島で変わった虫や魚を捕ったり出来る。
 ・素潜りで貝を捕れる。

ミニゲームもものすごいプリミティブな内容。移動出来るエリアも狭いですし、ゲームとして見れば「ああ、こんな感じの追加エリアもいいよね」程度の印象。

なんですけどね、これがいいんです(複数人プレイに限りますが)。何がイイって言うと、誰かと一緒に南の島に行く、という旅行感の再現がスゴイ。



たとえば、往復の船。船頭さんがリクエストで適当な歌を歌ってくれる。ゲーム的には時間のロスでしかない行為だけれど、何だか嬉しい。

たとえば、素潜り。ものすごくゆっくりで旋回も移動も遅い。ままならない。だけど、そのままならなさが素潜り感満点。

他にも「多人数でのゲーム開始」が「海の家(?)のバリっぽい網椅子にみんなで腰掛ける」とか「素潜りの時のレンタルのウェットスーツがダサいショップのデザインでみんなでお揃いで着る」とか、なんかこう「旅行に行った感」がキチンと再現されている訳です。



僕は大昔にアーケードのスキーゲーム(の背景グラフィック)を作っていた事があります。続編だったので改善案を出そうと思ってレポートを書きました。要約すると以下のような感じで。

 ・一般人にとってスキーが楽しいのはその「雰囲気」である。
 ・友達と泊まる民宿とか。
 ・遠くに見えるキレイな山とか。
 ・異性の同級生と一緒にゴンドラに乗っている瞬間とか。
 ・だからゲームスタート前にリフトやゴンドラのシーンを入れましょう。

提出したら、上司に鼻で笑われましたが。



あの頃思い描いていた「楽しい旅行感」が、今になって、しかもこんなプリミティブな形でやってくるとは思いませんでした。仮想旅行に必要だったのは、HMDとか、高精細のポリゴンとかではなく、ローポリゴンで作られたダサイウェットスーツだったんです。

ゲームは現実世界を模倣する事が基本です。だけど、システムリソースの関係で全ては乗せられない。だからある程度要約して現実を描写する必要がある。その時に、ゲーム性の名の下に切り捨てられてきた現実世界の余白部分が、この南の島にはある。

こういう行間で描写するゲームを見ると、まだまだゲームの可能性もあるんだなーと思った次第であります。


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